新緑
五月の連休、新潟の家内の父がのんびりとバス路で遊びにきた。まだ春浅い新潟の萌黄色から東京に近づくにつれ鮮やかな若葉の色と、刻々と
変化する新緑が楽しめたそうだ。
翌日、一緒に近所の金沢自然公園へ出かけた。園内のバスは、長蛇の列。混雑でいらいらし、速やかなバスの運行のためには民営化したほうが 良いのではと考えていると、掲示板の園長のメッセージが目に留まった。
[休日は乗り切れないお客様から小言も頂戴しています。が、ちょっとまって。ここは横浜の緑の拠点。樹々の緑と清々しい風の中で楽しくハイキングは如何ですか。クルマ、車を忘れて]
急ぐ必要は無かった。園長の勧めに従って4時間、山道を歩いた。「ツツジ、 サツキ、キンモクセイ、ヤマブキ」子供が理科で習ったと言いながら、道端の花や木の名前を教えてくれた。遠方に足を運ばずとも横浜にもまだ自然は充分残っている。
「山の緑は実によかったな…」その夜、義父はグラスを片手に語った。
“より速く”が尊ばれる時代ではあるが、時には立ち止まり周囲をゆっくり見渡せば、普段は見えないものが目に映ることがあることを義父と園長に教えられた。

