舞踏病
ダンスを終えて席に戻ってきた女性が私に囁いた。「私、踊り病なの」と。
このうら若きご婦人は、残念ながら私の妻ではなく、もっと残念なことに私の愛人でもない。
このうら若きご婦人は、残念ながら私の妻ではなく、もっと残念なことに私の愛人でもない。
この言葉を聞いて、私は大学の内科の講義で学んだことのある「舞踏病」
のことを思い出していた。私の記憶では、それは命名の優雅さとは裏腹に、
まるで踊っているかのような四肢の不随意運動を伴う症状の病気だったはずである。命名の妙で言えば、中国語の「愛滋病」もそうだ。エイズという恐ろしい病気を、「愛滋」と表現したその語感の適切さには感服させられる。
最近新聞を賑わせた「狂牛病」や「エボラ出血熱」のように、直截的でいかにも恐ろしげなネ−ミングより、優雅な命名の方が好ましい場合もあるのではないか。
私がこんなことを連想しながら話していると、彼女が聞いてきた。「ねえ、 歯医者さんの世界にはそんな病名あるの」。はて、歯科の世界にそんな優雅な病名があったか知らん。

